キミの心に届くまで


そう言われて、腰に回しかけていた手がピタッと止まる。



フッ



「途中でやめるとかナシだろ」



戸惑っていると、フッと笑った声が聞こえて頬が熱くなる。


郁都はこんな時でもすごく余裕がある。


……慣れてるんだね。


きっと、小町さんと今までこういうことを……。



ーーズキン



「泣いた?」



「え……ううん」



至近距離で顔を覗き込まれて、さらには言い当てられてドキッとする。


とっさにウソをついてしまい、気まずさから目を伏せた。



「ウソつけ、涙の跡ついてるし」



「うそっ」



ヤバ。


ちゃんと拭いたつもりだったのに。


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