キミの心に届くまで

あと5分くらいで昼休みが終わるという頃、隣に座っていた彼がパッと立ち上がった。



そういえば、学年も名前も何も知らないや。



『俺のこと知らねーの？』なんて聞いて来たくらいだし、なにかのウワサがあったりするのかな？



悪いことばっかりしてるって有名だ、とか……？


女癖が悪い、とか……？


見た目で判断しちゃダメだけど、彼を見てるとどうしてもそんなことばかり浮かんで来る。



「1年5組、片桐 郁都（かたぎり いくと）」



「え？」



突然なんの前触れもなく放たれた言葉に首を傾げる。



片桐……郁都？


この人の名前、だよね？



「あたしは……」



「知ってる。1年1組の大橋 陽良（おおはし ひよ）だろ？」



え……？


なんで、あたしの名前。