キミの心に届くまで


しばらくすると、郁都の寝息が聞こえて来た。


きっと今日が、人生の中で1番幸せな夜。


忘れられない、大切な大切な夜。



温かさで満たされて幸せなはずなのに、涙が溢れて来るのはなんでだろう。



「……っく」



胸が苦しくて、張り裂けそうなほどツラい。


涙が頬を伝って何度も流れ落ちた。



とてもじゃないけど眠れなくて、どうしても一緒にいるのがツラくて。


このまま目を覚まして顔を合わせたら、きっと泣いてしまう。


困らせてしまう。



本音が漏れて、止まらなくなるのがわかっていた。



だからあたしはカーテンの向こうが白み始めた頃を見計らって、そっと腕の中から抜け出した。



服を着てスマホをポケットに入れると、寝ている郁都の顔も見ずにそのまま家へ帰った。


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