キミの心に届くまで



帰って来てからシャワー浴びると、少しだけ寝てから翼のお見舞いに行った。



お父さんとお母さんの姿はなくて、家にもいなかったから所在はわからない。


車がなかったから、2人でどこかに出かけたのかな。


昨日何度かスマホに電話があったけど、出れずにそのまま放置していた。


だって……心配なんてしてないと思うから。



「おねーちゃん」



風邪が悪化して入院していた翼だったけど、どうやらもうずいぶん良くなったようだった。


学校に通えるって言ってたもんね。



「元気だった?」



あたしは精いっぱいの笑顔を翼に向けた。


気が緩むと、すぐに涙が溢れて来る。



「うん……!あのね、僕がお家に帰ったらお引っ越しするって本当?」



少し不安気な顔で翼は聞いて来た。


まだ6歳の翼に、お父さんとお母さんが離婚するっていう意味はわかるのかな。



「うん。お母さんの田舎に帰るんだよ」



「田舎?」



キョトンと目を丸くする翼。



「あー、お母さんのおばあちゃんの家に住むの」


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