キミの心に届くまで
真夏の訪問者
それから日々はあっという間に過ぎて行き、転校してから初めての夏休みに突入した。
家にいても蝉の声がうるさくて、テレビや勉強に集中出来ない。
さらには暑くて暑くて、出かける気にもならなかった。
「おねーちゃん!僕ね、今日お友達のお家に泊まりに行くんだよ」
「そうなんだ〜!楽しそうだね」
「うん!」
学校に通い始めた翼は、あれから一度も入院せずに元気いっぱいの日々を送っている。
お父さんもお母さんも、やり直すと言ってから2人で笑い合ってる姿をよく見かけるしいい雰囲気。
「陽良は出かけないの?お父さんとお母さん、今日は久しぶりに2人で食事にでも行こうと思ってるんだけど。陽良も一緒に行く?」
「あたしはいいから、2人で出かけて来なよ!なんなら、そのままお泊まりして来てもいいよ」
ニヤッとしながらお母さんを見る。
「ひ、陽良ったら……!からかわないで」
お母さんは顔を真っ赤にさせて、恥ずかしいのかキッチンの方へ逃げて行った。