キミの心に届くまで


「じゃあ、頑張ってね!」



「気を付けろよ!ばあちゃんに見つかるとうるさいから、早めに帰って来いよな」



「わかったー」



はたから見たら両想いだってバレバレなのに、気付いてないのは当人だけ。



いいな。


手を伸ばせば届く距離にいること。


受け止めてくれる相手がいることが。



心にぽっかり開いた穴は未だに塞がらない。


あたしは今でも、キミだけしか見えていないんだ。



川まで来ると、岩の上に座ってサンダルを脱いだ。



昨日雨が降ったせいか、ぬかるんでいて滑りやすくなっている。



「わ、つめた」



真夏だというのに、川の水はビックリするくらい冷たくて気持ちいい。



繁った木が影になっていて、暑さもそこまで感じなかった。


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