キミの心に届くまで

優等生なあたし



その日の放課後。


特になんの予定もなく、そのまま家に帰った。



学校から家までは自転車で20分の距離。


平坦な道だから、特に苦痛を感じることはないけど暑いとジワジワ汗が浮かんで来る。



学校周辺は交通量も多くて賑わっているけど、住宅街に入ると途端に静かになる。



あたしの住むところはいわゆる高級住宅街というやつだ。



自転車をガレージの隅っこにとめて玄関の鍵を開ける。



「ただいま」



そう言ったって『おかえり』という声が返って来ないことを、あたしは知っている。



だけど言わずにはいられない。



もしかしたら、返事が返って来るんじゃないかって期待がどうしても拭えないから。


< 34 / 374 >

この作品をシェア

pagetop