キミの心に届くまで
ーードクン
「陽良……」
ケンちゃんの後ろの木の影に隠れるように立っていたのは、あたしが今一番会いたいと思っていた人。
ずっとずっと、会いたくてたまらなかった人。
「な、なんで……郁都がここに……」
ど、どうして……?
「なんでって……今、夏休みだし……」
郁都は一歩、また一歩とゆっくり近寄って来る。
無造作にセットされた茶髪の髪。
眩しそうに目を細める顔は、無愛想だけどすごく悲しげで。
まだ、前に進めていないことがわかる。
まだ……苦しんでるんでしょ?
それなのに、なんで……。