キミの心に届くまで
「……お前は会いたくないかもしんねーけど。俺は」
郁都がツラそうに顔をしかめる。
そんな顔が見たいわけじゃない。
笑ってて欲しいのに、あたしといるとそんな顔ばっかりしてる。
「来ないで!……帰って」
お願いだから、もうこれ以上傷付かないで。
あたしのせいで、傷付く郁都の顔を見たくない。
「帰らないなら、あたしが帰るから……」
川のそばに置いたサンダルを取ろうとした時、ぬかるみに足がハマって滑ってしまった。
「あ……」
ヤバい!
そう思った時には遅くて。
目の前の景色がスローモーションのように流れて、体が川に投げ出される。
ーーバシャン
「陽良っ!」
全身が冷たい水に包まれて、流れが速いせいで身動きが取れない。
手足をジタバタさせてみても、深いから足が届かなかった。
もがけばもがくほど、流れに流されてゴツゴツした大きな岩に体が打ち付けられる。
息が苦しくて目も開けられず、必死にジタバタするしかなかった。