キミの心に届くまで
ーーガチャ
ドアを開けると、広々としたダイニングとリビングが顔を覗かせる。
不気味なくらいシーンとしていて、生活感のかけらもないそこ。
「はぁ」
朝出て来た時となんら変わらない光景を見て、重いため息を吐き出した。
家具は全部、センスのいいお母さんこだわりのオーダーメイドのもの。
広くてオシャレで高級感が溢れているのに、寂しさしか感じないのはなんでだろう。
ウォールナットの焦げ茶色のテーブルの上に、1万円札が3枚置いてあった。
今日は帰って来たってことだよね……?
だったら、あたしが学校から帰って来るまでいてくれても良かったのに。
まぁでも、仕方ないよね。