キミの心に届くまで


ーーガチャ



ドアを開けると、広々としたダイニングとリビングが顔を覗かせる。


不気味なくらいシーンとしていて、生活感のかけらもないそこ。



「はぁ」



朝出て来た時となんら変わらない光景を見て、重いため息を吐き出した。



家具は全部、センスのいいお母さんこだわりのオーダーメイドのもの。



広くてオシャレで高級感が溢れているのに、寂しさしか感じないのはなんでだろう。



ウォールナットの焦げ茶色のテーブルの上に、1万円札が3枚置いてあった。



今日は帰って来たってことだよね……?


だったら、あたしが学校から帰って来るまでいてくれても良かったのに。



まぁでも、仕方ないよね。

< 35 / 374 >

この作品をシェア

pagetop