キミの心に届くまで
郁都って、こんなキャラだったっけ……?
こんなにイジワルだった?
ぶっきらぼうで無愛想で、あたしに興味なんかないんだと思ってたけど。
「ケンって奴が心配してると思うから、とにかく行くぞ」
「あ、うん」
そういえば、ケンちゃんの存在をすっかり忘れていた。
心配、してるよね。
ずいぶん流されたように感じていたけど、実際は100メートルくらい流されただけだった。
曲がりくねった山道を歩いていると、途中でケンちゃんの姿が見えて大きく手を振る。
「大丈夫か?」
ケンちゃんは心配そうな顔で駆け寄って来ると、あたしの顔を覗き込んだ。
額には汗が浮かんでいて、慌てて探してくれたんだろうということが予測出来る。
「うん、ごめんね」
「ったく、気を付けろよな。マジ寿命縮んだし」
「ごめんごめん」
「ったく。昔からお前だけは」
ペロッと舌を出して見せると、ケンちゃんはあたしの頭を軽く小突いた。