キミの心に届くまで


「うん……っ。もち……ろんだよっ」



嗚咽がもれてうまく言葉に出来ない。


コクコクと頷きながら必死に肯定してみせた。


心に開いた穴が満たされていくのを感じる。



「じゃあ……そろそろいいよな?もう、俺のもんだし」



「え……?んっ」



フッと笑ったあと、一瞬にして唇を奪われた。


柔らかくて懐かしい郁都の唇の感触に、涙が何度も頬を伝う。


心が幸せな気持ちで満たされると、こんなにも温かい涙が出るんだね。


知らなかったよ。


こんなに嬉しい涙があることを。


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