キミの心に届くまで


そう、あたしはいい子。


そうでなくちゃいけない。


だから、お父さんとお母さんを困らせちゃいけないんだ。


ワガママを言わないで、甘えたい気持ちを抑えて……本音を心の奥にしまい込んで。


それでもなんとか気を引きたい一心で、勉強を一生懸命頑張った。


そうすれば、いつかあたしを見てくれるかもしれない。


少しでもいいから、気にかけてくれるかもしれない。


翼のことは関係なく、あたし自身のことで褒めてくれるかもしれない。



だからこそ、大嫌いな勉強も頑張れた。


お母さんの言いつけ通り、いい子でいた。



あたしが10歳の時に翼が生まれてから、ワガママだって言った記憶もない。


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