キミの心に届くまで
朝。
いつもより少し遅れて登校して来たあたしは、自分の席に着いてカバンから教科書を取り出していた。
「陽良〜、おはよう」
そこへ相変わらずほんわかした雰囲気のすずが笑顔でやって来た。
「おはよう」
あたしも笑顔でそう返す。
愛想笑いはもう、昔から身に付いている唯一のワザ。
可愛らしい雰囲気だったすずは、柏木君と付き合い始めてから少しだけ綺麗になったような気がする。
「あ!ねぇねぇ」
すずは自分の席に着くなり、クルッと振り返ってあたしの顔を覗き込んだ。
「なに?」
「今日さ〜、潤君とデートなんだけど!行き先はどこがいいと思う?」
ーーズキン
デート……。
はしゃぎながら聞いて来るすずに、黒いモヤモヤが心を覆い始める。