キミの心に届くまで
「陽良〜、課題やった?」
教科書を取り出したすずは、トントンと机の上で整えたあと振り返って声をかけて来た。
眩しくてキラキラしているその顔からは、幸せオーラが滲み出ている。
特に、グロスで艶めく唇がやけに色っぽく見えた。
この唇で柏木君と……。
いや、ダメダメ。
余計なことを考えちゃ。
「あ……うん」
「本当?あたし忘れちゃってて〜!ちょっとだけ見せてくれない?」
「もう時間ないし、先生来るじゃん」
「そうだけどさ〜!ちょっとだけ!答えだけでいいから」
顔の前で両手を合わせて、可愛らしく頼み込んで来るすず。
「自分でしなよ」
こんなのはいつものことなのに、なぜかトゲトゲしい口調になってしまった。