キミの心に届くまで


待って。


頭がついていかない。


その名前を聞いて、思い浮かぶ人はただひとり。


だってその名前の人物は、うちの学校じゃとても有名だから。



まさか、あの……柏木君のこと?


ねぇ……ウソ、でしょ?



「実は夏休みに入ってすぐくらいに告られちゃって〜!ちょっと気になってたから、付き合うことにしたの。でも本当ビックリしたよー。まさか、あの王子様の柏木君があたしなんかを好きだなんて」



ーーズキン



やっぱり、あの柏木君のことだ。


『王子様』って言葉でピンと来た。


ううん、本当はわかっていたけど認めたくなかっただけ。



そっか。


柏木君はすずのことが好きだったんだ。



知らなかった。


なーんだ……。


そうだったんだ。



「そう、なんだ……良かったね」



ショックを受ける自分の気持ちを押し殺して、笑顔でそう言ったあたしは本当にバカだ。



そんなこと、微塵も思っていないくせに。


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