【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「っ……どうしてっ、どうして!?」
松江の制止も聞かず、大河内は声を荒げた。
「どうしてよ、倉橋さん……! 大地くんはあんなにも、あなたことを思ってるのに……。どうして倉橋さんはっ、大地くんを一人にするの……っ?」
繋いでる手がピクッと跳ねたのが分かった。
あの暴力を愛と言っていたほどだから、愛されている自覚はあるんだと思う。
「……もういいだろ、美衣奈。帰ろう、兄さんが待って……。」
「アタシは!! ……っ、アタシは、倉橋さんが羨ましい……っ!」
……それから大河内は、半ば引きずられるよう強引に、松江を連れて行かれた。
僕たちを囲っていた野次馬たちも、事が終わって次々へと帰っていく。