【完】一粒の雫がこぼれおちて。
side 倉橋しずく
自分が分からない。
自分の気持ちが、分からない。
「大丈夫……? しずくちゃん。」
放課後1人。
いつも和泉くんと昼食を食べている中庭にいると、里沙ちゃんがやって来た。
「蒼空くんが意地悪したの?」
「違うよ……。……蒼空くん?」
和泉くんは他人に自分の名前を呼ばれるのを嫌う。
一度私も呼んだことがあって、物凄く怒られた。
なのに里沙ちゃんはごく普通に名前を呼んでいて……。
一瞬、モヤッとしたものが私の心を掠めた。
「あたしね、蒼空くんと従兄妹なの。」
「いとこ……?」
「うん。今は殆ど話さなくなったんだけど、昔は仲良かったんだよ。」