【完】一粒の雫がこぼれおちて。





いつも和泉くんに付きまとっていたくせに、何も知らないだなんて。


自分の愚かさに、失笑した。



「……でも、蒼空くんが昔と変わったことは知ってるんだね。」


「え……?」


「声に出てたよ。」



知らぬ間に思ってたことをそのまま口にしていたようで。


隣で聞いていた里沙ちゃんは面白そうに微笑んでいた。



は、恥ずかしい……。



「蒼空くんと昔、会ったことあるの?」


「い、一応……。……だけど和泉くんは、覚えてないと思う。会ったと思っても1度だけ、それも一瞬だけなの。」



そう、一瞬だけ……。


4年前の、冬の日のこと……。



夕暮れの涼しい風に当たりながら。


私は過去のことを思い出した。





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