【完】一粒の雫がこぼれおちて。





お母さんは既に、いなくなっていた。



確かな日付は覚えてない。


私が気づかないぐらいあっさりと、お父さんと離婚していなくなっていたんだ。



それがあってか、お父さんの暴力は増す一方だった。



「痛いっ、痛いよ、お父さん! イタイ……!」



日頃の鬱憤が詰まった暴力は、痛くて辛かった。



私をストレス発散としか接しない。


私への〝愛〟も〝言葉〟もない暴力は、苦しくて仕方なかった。



毎日、苦しくて。

毎日、辛くて。

毎日、悲しくて。



その日だけは、耐え切れなかった。



その日。


その日は、私の誕生日。



まだ優しかった頃のお母さんが、教えてくれた日。


まだ優しかった頃のお父さんが、祝ってくれた日。





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