【完】一粒の雫がこぼれおちて。





雪が深々と降り積もる中。


私はその一心で、街を歩き続けた。



〝死ななくちゃ〟

〝死にに、いかなきゃ〟


そう思うのに、歩けば歩くほど。


体が動かなくなっていく。



薄着で出て来たから余計、寒さが体に凍みて。


凍みれば凍みるほど、温かいものが頬を伝っていった。



〝死にたくない〟



思ってはいけないことだ。


だって私に、帰る場所なんて無いんだから。


居場所なんて、無いんだから。



私とは違って、家族でイルミネーションを見て写真を撮る人たち。


恋人同士でプレゼント交換をする人たち。


友達を集めて、パーティーを始める人たち。



私の存在は、一体なんなのだろう……。





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