【完】一粒の雫がこぼれおちて。
は?
つまり、何?
「本当の兄弟じゃないってこと?」
「……そ。」
何の戸惑いもなくサラッと言い放った松江に、ほんの少しだけ驚く。
こういうのって、本来言いにくいことじゃないの?
「俺が和泉にこのことを話すのは、兄さんのことを分かってほしいから。」
「松江大地のことを……?」
「確かに、和泉から見れば兄さんは悪役だ。暴力が愛情になるとも、俺は思ってない。」
大河内が少しだけ、目を見開いていた。
堂々と話す松江を見ていて、僕はあの日を思い出す。
しずくを奪い去った、あの日の松江大地を。
「潤平っ、そのことは……!」
「美衣奈は何も気にしなくていい。兄さんには、自分から話すから。」