【完】一粒の雫がこぼれおちて。
side 松江大地
物心つくとき、オレは施設にいた。
名前も知らない、オレの妹。
生まれたばかりの、小さな赤ちゃん。
オレの、宝物。
「大地、ごめんね。」
母さんはそう言って、オレと妹をここに預けた。
妹が0歳、オレがまだ3歳のときに。
ずっと一緒だと思っていた。
周りなんて信じられなくて。
オレと妹、たった2人だけの孤独だと思っていた。
……だけど。
「よろしくね、大地くん。アタシのこと、本当のお母さんと思って?」
オレは松江家に引き取られた。
妹の名前を知ることもなく。
〝松江大地〟
それが、オレの名前となった。
旧姓は、倉橋。