【完】一粒の雫がこぼれおちて。
松江家は元々、子供が出来にくい家庭だったらしい。
それでも1人、頑張って生んだ長男の松江潤(まつえ じゅん)。
そいつはオレが引き取られる数日前、オレと同じ3歳の若さで事故死したらしい。
所詮、オレはそいつの身代わりだった。
今思えば、オレの存在価値はそんなちっぽけなもの。
だけど当時のオレは純粋で無垢で。
新しく出来た両親に良く見せようと、必死だった。
間違って〝潤〟と呼ばれてもニコニコして、お手伝いは毎日した。
留守番してる間は1人で洗濯物を片付けて、物も何もねだらなかった。
捨てられたくなかった。
施設に戻りたくなかったわけじゃない、どちらかと言えば戻りたかった。
ただ、〝捨てられる〟ということが嫌だった。