【完】一粒の雫がこぼれおちて。
オレを入れて三男坊となる弟の名前は、松江潤平。
今も施設にいるであろう妹とは、ギリギリ同級生になれるであろう年だった。
そしてずっと怯えていたこと。
それは現実となった。
「お母さん、お腹空いた……。」
「え? あー、じゃあ適当にお菓子でも食べといて。アタシは今、潤平の子守で忙しいの。」
「でもオレ、お母さんのオムライスが……。」
「しつこいわね! 今忙しいって言ってるでしょ!? 見なさいっ、アンタのせいで潤平が泣いたじゃない!!」
……描いていた想像よりはマシだったのかもしれない。
捨てられはしなかった。
役立たずなオレでも、まだ松江家に残すことは許してくれた。
今思えば、おかしい話だ。
初めて会ったときから、お母さんのお腹は膨れていた。
オレが拾われたのは12月で、潤平が生まれたのは翌年の3月。
知ってたんだ。
新しい子がお腹にいると知って、その子が生まれて来るまでの寂しさを埋めるために、松江家はオレを拾った。