【完】一粒の雫がこぼれおちて。
ただ、オレの存在価値は消えて。
4人家族の家庭の中、オレは独りで生きた。
ずっと、何年間も孤独に。
小学校6年生、最高学年となったとき。
自分より幾分と小さい女の子を見かけた。
もうその時になれば、本当の親の顔も、旧姓も、何も覚えていなかった。
分かっているのは、今の親とは血が繋がっていないことだけ。
そう、だから。
名前を知っても、何も気づかなかった。
知らなかったんだ。
「オレの名前は松江大地。倉橋しずく、オレの女になれ。オレがお前を守ってやる。」
……今思えば、ませた告白だった。
まだ中学生にもなってない餓鬼が、何ぬかしてんだって。
当時のオレに言ってやりたい。