【完】一粒の雫がこぼれおちて。
正気なんて、保てるわけがない。
何年間も愛し続けた彼女が、妹だったなんて。
抱いてはいけない、結婚できない、なんて。
信じられるか?
受け止められるか?
……オレには、無理だ。
しずくを手放すことも。
しずくを、一生を掛けて愛すことも。
だから。
『じゃあ奪うから。』
和泉蒼空が言ったとき、〝よかった〟……そう思った。
もうこれ以上、しずくを傷付けなくて済む。
傷付けた本人が言うのも何だけど、傷付けたくなかった。
しずくが微笑む度、欲情する。
オレも男だ、当たり前に、抱きたいと思う。
そんなオレの想いを引き止めたのは、しずくの体に残る痛々しい傷だった。
見る度、思い出す。
しずくが妹だということ。
オレが、しずくを傷付けたということ。