【完】一粒の雫がこぼれおちて。
――「里沙のくせに……生意気だっつーの。」
ふと過去の話を思い出して、僕は笑った。
きっと松江から2人の過去の話を聞いたから、それに影響されてだ。
丁度、3年前の話だった。
僕が両親を守りきれなかった、辛い記憶。
そう、これが合気道を辞めたきっかけ。
……2度と、合気道は使わないって決めたけど。
守る相手が、出来た。
守りたい、そう思う相手が傍にいる。
だから、もう一度合気道を始めよう。
合気道を教えてくれていた、道場の師匠はきっと僕を叱るだろうけど、それでも。
もう大切な人がいなくなることは嫌だから。
もう守れないなんてことは嫌だから。
……今度こそ僕は、しずくを守りたい。
僕の持つ力、合気道で。