【完】一粒の雫がこぼれおちて。
しずくを手放す気は更々無い。
誰にも、譲りたくない。
「……よぉ、和泉。」
特に、松江大地には。
「こんな朝っぱらから呼び出して、何だよ? オレ寝起きなんだけど?」
翌日の午前7時。
僕は松江家の前にいる。
ちなみに今日は日曜日だから、学校は無い。
昨日、松江弟、潤平の方が教えてくれた電話番号に掛けて、松江兄を呼び出した。
呼び出された本人はまだ眠そうに、欠伸を噛み締めて目の前に立っている。
「呼び出した理由なんて、考えなくても分かると思うけど?」
「……だな。わりいわりい。正直、今お前とは話したくなくてな。」
……そんなの、僕も同じだけど。
なんか面と向かって言われると、腹が立つ。