【完】一粒の雫がこぼれおちて。
アイツのことは無視して、僕はブルーベリーパンを食べながら黙々と本の続きを読んでいく。
これは昨日、下校の帰り道に本屋に寄って買った、最近にして漸くの当たり本だ。
倉橋なんかに構っている暇は無い。
僕は早く、この本を読み切りたいんだ。
「何の本?」
そんな僕の心境も理解出来ない頭の悪い倉橋は、僕の肩に頭を預けて、本を覗き込んで来る。
……というか近い!!
「く、倉橋っ! 離れろ!」
「えー……。」
「えー、じゃない!!」
まず、僕たちは年頃の学生だ。
倉橋は女で、僕は男。
ましてや恋人でも愛人でもない、ただのクラスメート、知人。
必要以上に近付く理由が無い。