【完】一粒の雫がこぼれおちて。
引き剥がそうとする僕とは真逆で、倉橋は僕にしがみついてくる。
なんでこんなに力が強いんだよ……!
確かに僕は鍛えもしない、もやし野郎だとは思うけど!
コイツはコイツで、力に問題があるだろ……!
いくら引っ張っても離れない倉橋に、諦めの溜息が口から零れる。
「おまえ、鬼かよ……馬鹿力め……。」
「鬼じゃないもん、倉橋しずくだよ。」
「分かってて言ってる。」
仕方無しに、腕にしがみついたままのコイツを放置する。
邪魔だし暑いし、離せるものなら今すぐにでも離したいが、どうもコイツは離れる気がしない。
それは僕が非力過ぎて、コイツは馬鹿力過ぎるのが原因だと思うが。