【完】一粒の雫がこぼれおちて。
――あれから数時間が経った。
今は、午後4時。
泣き止んだしずくを連れて、僕たちはまたバスに揺られた。
着いた先は………病院。
「病院……? 和泉くん、ここに来てどうするの?」
「……会ってほしい人がいるんだ。」
しずくは首を傾げて、不思議そうに僕を見詰める。
可愛いな、と思いつつ。
早くしないと面会時間が終わってしまうので、僕はしずくの手を握ったまま足を進めた。
……しずくは、僕を恨むだろうか。
恨むかもしれない。
だけど、僕の気持ちも分かってほしい。
僕の家族はもういない、死んでしまったから。
……会いたくても、もう会えないんだ……。