【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「え……。」
「……おとう、さん……?」
互いに顔を合わせた、僕の隣にいたしずくと充巴さん。
しずくは目を丸くしていて、その体の指先は微かに震えていた。
僕はソッと、その手に指を絡める。
「本当に……しずくなのか……っ?」
ベッドの上にいる充巴さんも、信じられないような目で、しずくだけを見ていた。
「……勝手に連れて来て、しずくには悪いと思っている。」
でも、分かってほしい。
「僕の家族は、もういない。突然にも、いなくなったんだ。」
人は、いつ死んでしまうか分からない。
大切な人は、必ずしも自分の傍にいるとは限らない。
「せっかく、生きているんだ。……2人を、会わせてあげたかった。」