【完】一粒の雫がこぼれおちて。
瞬きもしないしずくの手を引いて、充巴さんへと近付く。
繋いだ手の震えが、ほんの少し強くなる。
「おとうさん……。」
「……あぁ、しずくだ。間違いない、しずくだ……。」
近付いたことによって、しずくに触れられるようになった充巴さんは。
その細く、今にも折れてしまいそうな手で、恐る恐るというようにしずくの手に触れた。
「しずくの、手だ……っ。」
真っ白なシーツに、ポツポツと涙の跡ができる。
その涙は、紛れもなく充巴さんの目から零れたものだった。
「会いたかった……!」
「っ……。」
しずくが混乱しているのが分かる。
当たり前と言われれば、当たり前なのだろう。
何だって、しずくの記憶に残る〝父親〟の存在と、充巴さんは……。
あまりにも、掛け離れているはずだから。