【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「大丈夫。」
優しくしずくに囁いて。
僕の手に繋がれた震えるしずくの手を、充巴さんの手に重ねた。
「おとうさん……お父さん……っ。」
制御していたプログラムが壊れたかのように、しずくの目からも涙が零れた。
ポツポツ、ポツポツ。
一粒、一粒。
たくさんの、雫。
「悪かった……悪かったっ、しずく……。本当に、悪かった……!」
今日の朝、松江大地と別れたあのあと。
僕はそのまま、松江大地に聞いた通りの道を歩んだ。
『少し離れているが、隣の隣の隣町……そこにある月見山という病院の506号室に……オレたちの父親が入院している。』
『入院?』
『……罰が当たったんじゃねえか? ……末期癌だと。』