【完】一粒の雫がこぼれおちて。
その頭に軽い拳を入れて、学ランを奪って羽織る。
もうすぐ本格的な冬になる。
いくら僕でも、寒いものは寒い。
「蒼空、今日は何の本を読んでたの?」
「ん、狼男が月に恋する話。」
「……それって恋愛ストーリー?」
「一応ね。まぁ、気分的に。」
昼休みを終えるチャイムが鳴ったので、そこで本を閉じた。
薄青と紺のストライプブックカバーが、守るように柔らかく本を包んでいる。
「でも、どうして狼男は月に恋したの? 真逆と言えばおかしいかもしれないけど……。全くもって、違う人種じゃない。それに、月は生きてないよ。」
「……いや、真逆で合ってる。それに月も生きているよ、しずく。」
「え?」
僕の言葉に、しずくは首を傾げた。