【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「そんなことはない。月は輝こうと思えば、朝でも昼でも、晴れでも雨でも雪でも。いくらでも、輝くことができる。」
「俺の闇は、おまえが照らしてくれた。ならば今度は俺が、おまえの光となって傍で支えてやる。」
……一目惚れだった。
この本を見かけた瞬間、〝買う〟以外の考えが思いつかなかった。
「満足したの?」
「……最高の作品だったよ。」
両親を亡くして以来、まるで闇の中にいるようだった僕。
誰よりも明るく輝いていたくせに、実は自分が一番闇の中にいたしずく。
そう、まるで。
狼男と、月みたいな。
「今度、私にも教えてね。」
「……気が向いたらね。」
本に被せた薄青と紺のストライプ、ブックカバーがふと外れて。
月に恋する、狼男の絵が見えた。
番外編①
想い出のページ END