【完】一粒の雫がこぼれおちて。





起こしても別に良いのだが……。



「い、ずみ……く……。」



そう言って、幸せそうに眠るコイツを見てると起こす気になれない。



僕のことなんか、暇潰し程度にしか思ってないくせに。


なのに寝言で僕の名前を呼んで……何だか、腹が立つ。



「……馬鹿人間が。」


「ん、ふふ……す、き……。」


「それ、誰に言ってるわけ?」


「ん、んー……。」



本当、腹立たしい。


これほどまでに自己中な人間、僕は見たことがない。



今は春、春の5月だ。


いくら夏に近付いているといっても、制服はまだ冬制服だ。



それに、人は眠っているとき体温が上がる。



……そんなことも知らないのか、コイツは。





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