【完】一粒の雫がこぼれおちて。
帰り、偶然にも見てしまった女と男の別れ際を思い出す。
……くだらない。
女が泣いて、男はそれを見向きもせずに背を向けていた。
理由なんて僕に分かるわけないけど。
どういう理由があったとしても、やっぱり恋愛や友情はくだらないと思う。
人はいつか死ぬもの。
離れ離れになることは分かっている。
それが早まるだけの話だ。
どうして泣く必要がある?
……そう考える僕には、人の心というものが無いのかもしれない。
クラスメートが僕のことを“アイス系男子”と呼ぶことにも、納得がいく。
そう自問自答をしたところで、急激な眠気に襲われた。
シャツのアイロン掛けのことが脳を過ぎるも、眠気には逆らえず。
僕はそのまま目を閉じた。