【完】一粒の雫がこぼれおちて。
と思っていた、矢先のことだ。
「ひ、ぅ……っ、ぁ……。」
またどこかの馬鹿男にでも泣かされたのか、道端でうずくまって泣いてる馬鹿女が一人。
これは“アイス系男子”と呼ばれている僕だけかもしれないけど、出来るだけこういうのには関わりたくない。
面倒臭いことは嫌いだ。
特に他人の面倒事に巻き込まれるのは大嫌いだ。
知らんぷりをして、女の隣を横切ろうとした。
――でもその瞬間。
「い、ずみっ、くん……いずみ、っ……くん!」
無意識にこぼれた呟きなのか。
それとも後ろ姿で僕だと分かったのか。
彼女は自転車で過ぎた僕の名前を、何度も何度も、まるで大切な何かのように口からこぼす。