【完】一粒の雫がこぼれおちて。
目の前で戸惑う倉橋の腕を引っ張り、自分の腕の中へと引き入れた。
「へ……っ!?」
驚く倉橋の声と、僕らを囃し立てる周りの馬鹿な人間たち。
そのまま1度強く抱きしめれば、貸した学ランから香ったのと同じ、柔らかな倉橋の香りがした。
「……ほら行くよ。乗って。」
ほんの少しの間そのままで、でも直ぐに僕はその腕を解いて。
自転車の後ろへと無理矢理乗せた。
「い、和泉くん! どこ行くのっ?」
「僕の家。アンタの家なんか僕知らないし。通り道ならまだしも、通り道じゃないのなら絶対送りたくない。」
「た、多分通り道じゃない……私、4丁目だから……。」
4丁目って、真逆じゃん……。