【完】一粒の雫がこぼれおちて。





「や、やだ! 落とさないでよ!」


「……じゃあちゃんと、掴まっておきなよ。」



1度は離れた倉橋の手を掴み、腰全体を包み込むように強く巻き付かせた。



「私……2人乗りするの初めて。」


「奇遇だね、僕も。」



いざペダルを漕ぎ始めるも、2人乗り初心者がこうも揃って2人。


自転車は中々真っ直ぐには進まない。



……それに僕の場合、自転車に乗っただけでも数ヶ月ぶりだというのに。



最後に乗ったのは1年生の最後。


修了式が近付いて、クラスの女子がお別れパーティーを企てて。


その時のパーティーグッズの買い出し係が、何故か僕に回って来た時以来だ、自転車に乗ったのは。




20分の道のりのはずが、いつもの倍以上の時間をかけて家へと着いた。






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