【完】一粒の雫がこぼれおちて。
side 倉橋しずく
不安定な自転車に揺られながら、夜の住宅街を和泉くんと通る。
目の前にある和泉くんの背中は暖かくて、私の冷えた手とは大違いだなっと思った。
「…………。」
和泉くんはどうして、あの場所にいたんだろう。
本屋さんにでも、用事があったのかな。
でも、本屋さんなら1丁目にもあったはずだし……。
……きっと聞いても、和泉くんは教えてくれない。
というか、怒られる気がする。
何となくだけど。
「はわっ……。」
段差を下りたのか、一瞬体が浮いた。
初めての2人乗りの感想は1言、怖い。
落ちるかもしれないという恐怖に、目の前の背中にギュッとしがみついた。