【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「ちょっと、掴まっててとは言ったけど、しがみついてとは言ってないよ。暑い、離れて。」
だけど直ぐさま和泉くんにそう言われ、仕方無しに距離を空ける。
和泉くんの香りが少し遠くなって、何だか寂しい気分。
「ちっ……信号。」
その時運悪く赤信号に引っ掛かってしまって、自転車はブレーキ音と共にスピードを落とす。
時間も時間だし、この道を歩いてる人は少ないというのに。
絶対信号は無視せずに、こうやってちゃんとルールを守る和泉くん。
律儀で冷静で、クールで、優しい。
クラスのみんなには冷たい、根暗と言われているけど、その寝顔はあどけなくて可愛くて。
決して根暗でもない、1人が好きなだけ。