【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「くしゅん……っ。」
突然吹いた夜風に、思わずくしゃみが出た。
家に帰ってから直ぐ電話で呼び出されて、慌てて家を出て来たから上着なんて着てない。
というか、制服のまま。
いつも向こうに泊まってたから、まさか追い出されるなんて思ってなかったし……。
「……ねえ、僕言わなかった?」
「え?」
「今日の帰り、僕言ったよね? アンタに風邪引かれるの、嫌だって。」
振り向いた和泉くんの目は、ほんの少し怒っているように見えた。
「夜にそんな格好して、一体何の為に僕は学ラン貸したのさ。」
バサッと、今まで和泉くんが着ていたパーカーを着せられる。
私と約20センチの身長差のある和泉くんのパーカーは、私の身長に似合わず物凄く大きい。