【完】一粒の雫がこぼれおちて。
信号が青になったのか、また自転車は進んで。
揺れはさっきよりも安定していた。
スピードも、さっきより少し早い。
「……寒くない?」
「別に。」
前を向いて素っ気なく言う和泉くん。
ほら、やっぱり優しい。
冷たくなんかない。
和泉くんは、いつも優しい。
「……ありがとう。」
袖に手を通すも、私の腕が短すぎて指先は出て来なかった。
それほどある、私と和泉くんの差。
身長だけじゃなくて、見た目も、性格の良さも……。
――「あのさ、着いたんだけど。早く下りてくれない?」
気づけば一軒家の前に私たちは止まっていて、初めてここが和泉くんの家なんだと知った。