【完】一粒の雫がこぼれおちて。
「僕が中学生のとき、2人とも死んだ。」
いつもと変わらない無表情のまま、そう言った和泉くんだけど。
……ほんの少しだけ、ほんの一瞬。
和泉くんの表情が寂しそうに見えた。
「…………。」
「気とか使わないでね、そういうのウザいから。」
何を言えば良いのか悩んでいれば、考えが読まれて先手を打たれる。
こんなこと思うのは、ダメなのかもしれないけど。
掛ける言葉が見つからなかったから、少しだけ助かったと思ってしまった。
「僕1度シャワー浴びて来るから、適当に寛いでて。」
家に入った途端和泉くんはそう言って、バスルームらしき方へと消えて行った。
その瞬間を見計らったかのように、私の携帯が震える。
「……大ちゃん。」