【完】一粒の雫がこぼれおちて。
本気じゃないけど、走るなんて久々。
多分、小学校以来。
ちなみにスピードは、周りが言うに性格と似合わず早い方らしい。
「ちゃんと付いて来てよ。」
差し出した僕の手に重ねて来た、倉橋の小さな手を掴んで、僕は走り出した。
「!? は、早いよっ、和泉くん!!」
「うるさい。これぐらいスピード出さないと、もう間に合わない。」
後ろで倉橋が何度も足を縺れさせ転けそうになるが、僕は構わず走り続ける。
久々に感じる風は少し心地好くて、でもやっぱり特別な理由が無い限り走りたくないと思う。
コイツの前だから声に出しては言わないけど。
慣れないことをすると疲れるし。
実を言えば、僕も何度か足が縺れそうになって、このまま走り続ければいつか転ける気がする。