【完】一粒の雫がこぼれおちて。
予想通りの言葉に溜息が出る。
「あんな塀なんか、普通に越えていけばいいのに。」
「わ、私は和泉くんみたいに大きくないもん!」
「チビ。」
「なっ!!」
隣でギャーギャー騒ぐコイツは無視して、昇降口で靴を履き替える。
倉橋と僕の間にある、20センチ以上の身長差。
こんなにも小さいコイツが……1人で生きていけるのか?
それとも誰かが、コイツを守っているのか?
誰が、コイツを守るんだ……?
柄でもないくせに、何かと、そんなことを考えてしまっていた。
「こらぁあーっ!! おまえら何してるっ、もうすぐ1限目が始まるんだぞ!」
「うげ……ウザいの来た。」
現れたのは、さっきまで門の前に立っていたはずの鬼の学年主任。
特徴は異様に髪の少ない頭だ。