【完】一粒の雫がこぼれおちて。
なのにそれを理解しない女が、ここに1人。
「どうしてあんなこと言ったの? 丸本先生、今頃カンカンに怒ってるよ……。」
丸本?
ああ、確かそんな名前だっけ。
「知らないね、アイツが怒ろうが関係無い。どうでもいい。」
「ど、どうでもいい……。」
僕の言葉に、倉橋は軽く苦笑いをこぼす。
「でも和泉くん。あとできっと丸本先生、和泉くんのとこに来るよ。」
「なんで?」
「なんでって。そりゃあ……あんなこと先生に言ったんだから、怒られるよ。」
「ふーん……。」
怒られる、か……。
アイツが僕を怒るってことは、またアイツの顔を見なくちゃいけないわけだ。
「あんな奴の顔なんて、2度と見たくないんだけど。」